『極』の値段は40万円以上!?越前がに漁解禁日の越前町の様子とは【福井県】

『極』の値段は40万円以上!?越前がに漁解禁日の越前町の様子とは【福井県】
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越前がに漁が解禁となる11月6日の前日から初競りまでの越前町の様子、越前町まち歩きのすすめなどを詳しく紹介します!

越前がに漁が最も盛んな越前町

福井県越前町。
越前加賀海岸国定公園に属する海岸線には、小型船が並ぶのどかな港町の景色が広がっています。

福井越前漁港の画像

そんな自然豊かで静かな町がひときわ賑わうのが、11月初旬から3月下旬にかけて。
この時期、福井県越前町では、カニ漁が盛んに行われます。

福井県でカニといえば、『越前がに』にほかなりません。
越前町の越前海岸では、毎シーズン、県内の越前がに(メスのせいこがに、2月下旬から漁が解禁される水がにを含む)の約7割が漁獲されています。

福井を代表する冬の味覚、越前がにはどのような土地で、どのような人たちによって、どのように消費者の元に届けられているのでしょうか。
今回は、越前がに漁が解禁となる11月6日の前日から初競りまでの越前町の様子、越前町まち歩きのすすめなどを詳しく紹介します!

越前がにの詳細はこちら>>冬の味覚の王者『越前がに』とは?

越前町で越前がに漁が盛んな理由は「地形」

越前町で越前がに漁が盛んな理由の一つは、地形にあります。
越前がにが生息しているのは水深300〜350m。
越前海岸は陸地から比較的すぐに水深が深くなり、越前がにの漁場が近いことが特徴。

かつては現在よりも海水温が低かったこともあり、江戸時代頃は、岸辺から網を投げて越前がに漁をしていたほど漁場が近かったと言われています。

現在は底引き網船で漁に出ますが、それでも遠くまで行く必要はないので小型船で漁に出ることがほとんどです。
越前町は、福井県内で最多の36隻の小型船で越前がに漁をしています。

地形は越前がにの品質にも影響

越前町の恵まれた地形や漁環境は、越前がにの品質にも大きく関係しています。

大型船の場合は沖泊まりをすることもありますが、小型船なら日帰りで漁をするのが通常です。
そのため、越前がに新鮮なうちに漁港に届けられるんだとか。
さらに、越前町沖の漁場は岩場なので、カニが砂を噛みづらいという特徴もあります。

このように越前町は、様々な要因が重なって、新鮮で美味しい越前がにが豊富に獲れるんですね!

越前がに解禁日の越前町の様子とは

越前がに漁は、毎年11月6日が解禁日。
この日、福井県内で一斉にかに漁が始まります。
解禁日前後の越前町はどのような様子なのでしょうか。

出漁式

福井越前漁港の画像

2017年11月5日11時。
越前がに漁解禁まであと12時間ちょっととなった越前町の大樟(おこのぎ)漁港を訪れました。

大樟漁港では、主に底引き網漁で水揚げされたものの競りが行われるため、越前がにの競りもここで行われます。

まだ解禁まで半日以上あるにも関わらず、漁港には多くの人が集まり、慌ただしい空気が漂っていました。
その理由は、毎年越前がに漁解禁の前日昼に行われる出漁式のため。

福井越前がに漁港出漁式の画像

出漁式は単なるセレモニーというわけではなく、金比羅山宮(ことひらさんぐう)の宮司さんが清祓をしたり、来賓や漁師さんたちが玉串奉奠(たまぐしほうてん=仏式の焼香にあたるもの)をしたり、神事という意味合いが強い印象を受けました。

出漁式をセレモニーとして開催するようになったのは3年前からですが、昔から、近くにある金刀比羅山宮(海の安全の神様を祀る神社)で安全や大漁祈願をしていたそうです。

会場には漁師さんや漁協の方、越前町の関係者の方が150人以上集まっており、越前町の人々の、越前がに漁を大切に思う気持ちが伝わってきました。

福井越前がに漁港出漁式明神太鼓の画像神事が終わった後は、越前町に伝わる和太鼓『だいずり』の披露も!

だいずりは、織田信長ともゆかりのある劔神社に奉納されている郷土芸能です。
独特な振りは、農家の田植えの様子や稲の成長などを表現しているんだそう。

さらに、副知事や漁師さんの挨拶の後、今年初めて漁に出るお父さんを子供達が応援する場面も。

福井越前がに漁港出漁式の画像

緊張して泣いている子もいましたが、とっても微笑ましくてほっこりさせてもらいました。

福井越前がに漁港出漁式の画像

最後は海にお清めのお酒をまいて終了。

漁関係者とその家族全員で、この日の夜から始まる越前がに漁の安全と大漁を祈願しました。

出港

福井越前がに漁港出港の画像

出漁式が終わってから約9時間後の、11月5日21時半頃。

越前がに漁解禁まで3時間を切った大樟漁港を再び訪れると、出港の準備をする漁師さんと、それを見守るご家族の姿がありました。

まだ歩けないような小さい子供たちまで、毛布にくるまれてお父さんのお見送りに来ていました。
家族総出で越前がに漁にのぞむんですね。

福井越前がに漁港出港の画像

準備が終わった漁船は、家族に見送られながら次々と出港し、22時頃までにほとんどの漁船が沖に向かっていきました。

しかし、まだ越前がに漁解禁までは2時間ほどあります。
今から漁に出てしまっては早いのでは?と思いながら眺めていると、やがて漁船が水平線上に一列に並びました。

福井越前がに漁港出港の画像

きれいにまっすぐに並ぶ漁船の明かりは、幻想的とも言えるような光景。

12時の漁解禁にフライングしないよう、22時半までは決められた距離に停泊する決まりになっていることでこのような景色が見られるんだそうです。

解禁日が決まっている漁の場合は、解禁日当日にこのような光景が見られることもありますが、越前町のように50隻もの漁船が並ぶことは全国的に見ても珍しいとのこと。
この光景を見るだけでもいい記念になりますよ!

そして、22時半になると一斉に船が動き出し、それぞれが目指す漁場に向かって行きました。
しかし、この後漁場に到着してもすぐに漁は始められず、12時の解禁と同時に網を入れるのがルールです。

越前がにが生息している漁場はある程度決まっていますが、漁師さんたちは長年積んだ経験と勘を頼りに、ここ!という漁場をそれぞれ目指します。
解禁日当日はほとんどの船が一斉にスタートするため、いち早く漁場に到着できるように船を改造したり、様々な工夫をしているんだとか。

漁が難しい場所は競合が少ないからたくさん獲れるかもしれない。
しかし、無理をして網を傷つけてしまうと修理に時間もお金もかかり、1シーズンずっと漁に出られなくなってしまう可能性もある。
そんな様々な事情を考慮して漁場を選び、漁に向かうのは、まさに「勝負」という感じですよね。

ここで、とても気になったので「今まで、解禁日に漁ができなかったことはないんですか?」と聞いたところ、「ありません!」とのお答えが。

悪天候の時もあったかもしれないのに、解禁日には必ず漁に出ているというのは、やはり漁師さんのプライドなんでしょうか。

帰港〜競り準備

福井越前漁港越前がにの画像

一夜明けた11月6日15時頃に大樟漁港を再び訪れてみると、すでに越前がにが入っているであろうケースがたくさん並んでいました。

毎年解禁日当日は17時頃にこの場所で初競りが行われます。
越前町の越前がには、ここから築地などに運ばれることはほとんどなく、大樟漁港で競りにかけられた後は、大部分が県内で消費されます。
つまり、越前がには福井県に来ないとほぼ食べられないということ。
福井県外であまり見かけないのも頷けますね。

競りが始まる前の大樟漁港を見学していると、驚くべきことに、すでに全てのカニに越前がにの黄色いタグが付いていました。

福井越前漁港越前がにの画像

越前がには資源保護のため、甲羅の幅が9cm以上(越前町は自主規制で9.5cm以上)のものしか漁獲できません。
そのため、網にかかった小さなカニは船上で選別してから帰港します。
さらに、水揚げされた越前がにには、競りまでに家族総出で黄色いタグがつけられます。

獲って水揚げするだけでなく、選別したり、タグをつけたりと、細かい作業があるのは本当に大変だと思います。

しかも、越前がにだけならまだしも、漁港にあったのはほとんどがメスのせいこがにでした。

福井越前がに漁港初競りの画像越前町はせいこがににもタグをつける唯一のまちなので、水揚げ後も、全てのカニにタグをつけるという気が遠くなるような作業が待っているということです。

黄色タグは競り後につけられると思っていたので、漁師さんたちが漁の後にこんなに大変な作業をしていると知り、本当に驚きました。

漁港にあがってきた越前がに、せいこがには、多くがすでに発泡スチロールに入れられていましたが、一部、まだ海水の中にいるものを発見!

福井越前漁港越前がにの画像

これらは漁獲した中でもサイズが大きいものだそう。
少しでも鮮度を保つために、競りの番が来るギリギリまでこの状態にしてありました。

初競り

競りは船ごとに行われます。
順番が近づいてくると、サイズの大きい越前がにの準備も始まります。

水が抜かれて…

福井越前がに漁港初競りの画像

1.3kg以上、1.2kg…0.7kg、0.6kg以下と100gごとに並べられます。

福井越前がに漁港初競りの画像

全てのカニが裏返しになっていますが、これは、水分が抜けて鮮度が落ちるのを防ぐためなんだとか。

まずはこれらの並んでいる越前がにから、列ごと(重さごと)に競りが行われます。
それが船ごとに繰り返されていき、全て終わった後に発泡スチロールに入った越前がに、せいこがにの競りが行われます。

福井越前がに漁港初競りの画像右にいる方が今回の競り人

越前がにに限らず、競りはとにかくスピード勝負!
競り人は競りで使われる特殊な数字を淀みなく発しながら、仲買人が値段を示す「手やり」を見て素早く値段を決めていきます。

何と言っているのかも、一体いくらになったのかもこちらには全くわかりません。

その活気とスピードにただただ圧倒されるばかりですが、かなり近くで競りを見学することができるので、越前がにをいただく前に競りを見に行くのもおすすめです。

厳しすぎる極の審査

競りが行われる少し前。
大樟漁港に集まる多くの人の注目を集める男性がいました。

福井越前漁港越前がにの画像

彼のズボンのポケットからは、何やら黄色いものがのぞいています。
実はこれ、越前がに『極』のタグなんです。

越前がに『極』とは

福井越前がに極漁港出漁式の画像

2016年の「極」の剥製

『極』とは、2015年度から新しくできた越前がにの最高級ブランドです。
毎シーズン、漁獲される全ての越前がにの中でたったの0.05%ほどしか認定されることはなく、年々初競りでの値段は上がっています。

2016年度に極に認定されたのは、漁獲量423tのうちたったの254杯(県全体)。
競り値の最高額はなんと37万円でした。

本物の越前がにの証として、越前がにには黄色いタグがついているのですが、極にはさらにもう一つタグがつくんです。

福井越前がに極漁港出漁式の画像

漁港に集まる多くの人の注目を集めていた男性のポケットからのぞいていたのは、このタグだったんです。

極に認定されるには、甲羅幅14.5cm以上、重さ1.3kg以上(越前町では1.5kg以上)、爪の幅3cm以上の規定を必ずクリアしなければなりません。
その規定を基準に、県の水産課や町の漁協の方などが極に認定できるかどうか判定します。
そのため、この日の漁港内でただ一人極タグを持ったあの男性の一挙手一投足に、漁港中が注目していたんです。

競り前に並べられていた越前がにの中には、1.5kg以上のカニの列の上に、各船で1〜2杯、よけられているものがありました。
それらが、極判定を待っているカニたち。

めでたく極に認定されれば、このようにタグをつけてもらうことができます。

福井越前漁港の画像

しかし、仲買人さんや購入するお店の方が納得しなければ、『極』認定が取り消されてしまうことも。
実際、今回の競りでは上の写真のカニには一度タグがついたものの、その後でタグが外されてしまいました。

極になるには、大きさの基準を満たすのはもちろんのこと、足が欠けていないか、甲羅は綺麗かなど、見た目の美しさも重要なんだとか。

会場には「指短い」と書かれるなど、規定を満たしているものの『極』になれなかった越前がにもそこかしこで見かけました。

福井越前漁港越前がにの画像

なんと、お腹が柔らかいだけでも極にはなれないほど、判定は厳しいものなんです。
福井越前漁港越前がにの画像

その証拠に、2017年11月6日の競り(初競り)で『極』と認められた越前がにはたったの1杯。

福井越前がに漁港初競りの画像2017年初の極を撮影しようと人だかりができる中、なんとか撮影に成功!

2017年最初の『極』は1.6kgでなんと46万円と、前年の37万円を大きく上回りました。

しかし、極と遜色ない大きさにもかかわらず、極になれなかった越前がにの値段はぐっと落ちてしまいます。
業界用語で「極落ち」と呼ばれる越前がにですが、消費者にとってはすごくお買い得とも言えるので、極候補だった越前がにと出会うことができたらラッキーかも!

競りで購入された越前がには越前町内のお店でお客さんに提供されます。
(一般の方は、最も早くて11月7日のランチで食べられます。)
豪華すぎるうおたけの越前がにグルメの詳細はこちら>>地元でしか食べられないかに刺しは絶品!旅館うおたけの越前がにプラン大公開!

番外編・越前漁港まち歩き

越前がにを食べに越前町に行くなら、のどかな港町をお散歩してみるのもおすすめ。
つづきは次のページへ!

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福井越前がに漁港初競りの画像
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