日本に数社!手漉きで襖紙を作っている『長田製紙所』にお邪魔しました!【越前和紙】
1500年以上の歴史がある福井県の伝統工芸品『越前和紙』。
日本で最初の藩札やお札(太政官札)など、越前和紙は日本の紙の歴史に深くかかわっている伝統工芸品ですが、実は手漉き襖も越前和紙の象徴的なもの。
手漉きの襖紙を専業で漉いてきた産地は日本でここだけなんです。
今回はそのうちの1社である『長田製紙所』さんにお邪魔し、工場や作業の様子を見学してきました。
『長田製紙所』で紙漉きの現場を見学!
一般の民家も多い普通の住宅街にある『長田製紙所』。
一見普通のお家のようにも見えますが、奥に入っていくと、そこには見たこともないような世界が広がっていました。
手前には、楮(こうぞ)を煮出し、叩いて柔らかくして和紙の元を作る部屋があります。
機械の大半が木製で、その長い歴史を感じることができました。
襖紙を漉く
さらに奥に進むと、紙を漉く場所があります。
小さな木枠を使って和紙の手漉き体験をしたことがある人もいると思いますが、長田製紙所で作っているのは主に襖紙。
和紙を漉く簀桁(すけた)も襖サイズの大きなものです。
二人がかりで手際よく漉いていく様子はまさに職人技。
越前和紙は昔から襖紙によく使われていた和紙で、桂離宮の襖にも使われている大変格式高いものです。
手漉き襖は越前和紙の象徴的なもので、手漉きの襖紙を専業で漉いてきた産地は日本でここだけなんです。
(越前和紙産地では、長田製紙所含め5社ある)
続いて、長田製紙所の一番のこだわりとも言える柄付けの作業が行われます。
漉いた襖紙の上に色付けした原料を流したり、和紙で作った花などを置いたりして、丁寧に襖の柄を作っていきます。
こういった柄付け技術を持つ職人の数は徐々に減っているそうです。
その後、漉いた紙は簀桁から外されます。
天井から伸びた器具を取り付けて、スムーズに和紙が移動されていきます。
この後、この大きな機械で手作業で水分を絞り、やっと越前和紙の襖紙が出来上がります。
工場内には出来立ての襖も立てかけられていました。
当たり前のように身近にある襖ですが、こんなに手間をかけて作られているなんて、考えたこともなかったのでびっくり!
インテリア和紙
さらに工場内には、デザイン性豊かな和紙もありました。
長田製紙所はかつては建築業を営む家でしたが、現社長のひいおじいさま(初代)が1873年頃に襖漉きを始めました。
それから約150年間この地で和紙を作り続け、現在は4代目(現社長・伝統工芸士 長田和也氏)が会社を切り盛りしています。
現在は、襖はもちろん、インテリア和紙を中心に手がけており、「飛龍」(絵柄を漉き込む技法)という技法を用いてタペストリーや照明などを制作しています。
間接照明を作っていただきました!詳細はこちら>>職人さん手作りの越前和紙間接照明♡柔らかい光がリビングに広がります
また、美術館で展示をしたり、六本木ヒルズの壁面オブジェや日本橋タカシマヤ・正面エントランスの巨大タペストリーを手がけたりと、その活動はもはやアートの領域。
工場内ではこれらがどのように作られているのかも見ることができました。
工場の真ん中に広がっていたのは、黒っぽく、粘度のありそうなの材料で絞られた無数の模様。
和紙の原料に、トロロアオイという植物の根っこから抽出した粘液を独自の方法で混ぜ合わせ、粘度を高めてこのように絞っているそうです。
迷いのない手つきで絞られていく様子はまさに職人技です。
揉み紙
また、工場内では揉み紙を作っているところも見ることができました。
和紙に膠(にかわ)を塗って揉む作業を4回ほど繰り返したあと、広げて、乾燥室に持っていきます。
通常の越前和紙よりもさらに手がかかることは一目瞭然。
原料の木の皮をに出すところから数えると、完成までに1週間ほどかかるそうです。
月に一度オープン!作品が展示される『記憶の家』
工場のすぐ近くにある記憶の家では、越前和紙を使ったインテリアや作品の展示が行われています。
建物内に足を踏み入れると、見渡す限り、和紙、和紙、和紙…。
和紙の壁紙やタペストリー、間接照明など、インテリアともアートとも呼べる素敵な作品がいたるところに飾られていました。
また、長田製紙所の象徴でもあるふすまは、一般的なデザイン以外に「長田製紙所オリジナルデザイン襖紙」というものもあり、こちらの建物でもとてもポップな襖紙を見ることができました。
これが襖!?と思うようなデザインですが、これなら洋室でも使ってみたくなりますよね。
単なる電球も、越前和紙をかぶせるだけでこんなにおしゃれで温かみのある雰囲気に…。
紙=ものを書いたりするために使うもの
と勝手に思っていましたが、越前和紙はそもそも襖紙などにも使われていたものなので、
インテリアとの親和性がものすごく高いんですね。
最近では、インテリアに越前和紙を用いる飲食店などが福井県内で増えているので、街で見かけた際にはじっくり見てみてください。
記憶の家は、月に一度の長田製紙所の蔵開きの際にオープンしているとのことです。
長田製紙所のこれから
旭日双光章を拝受した伝統工芸士である長田榮子氏(三代目・現会長)を祖母に持ち、現社長の娘さんである長田泉さんにもお話を伺いました。
大学卒業後は東京で旅行関係の仕事に就いていましたが、もともと経営に興味があったことから、現在は帰郷して実家の家業に携わっています。
最近では、揉み和紙を使ったアクセサリーや、揉み紙をあしらったトートバックの企画・販売なども行っています。
膠が塗られているので多少の雨程度なら持ち歩いても平気とのこと。
「紙を超えて革っぽい質感が特徴です。この質感を活かして、これからもいろいろな商品を開発できたら」と泉さん。
アクセサリーもトートバッグもとっても可愛いので、次の商品にも期待大です!
長田製紙所には販売スペースも設けられているので、こちらでアクセサリーやトートバッグをはじめ、さまざまな和紙アイテムを購入することができます。
連絡すれば対応してもらえるので、近くに行く際には立ち寄ってみては?
また、オンラインショップもあるので、チェックしてみてください!
泉さんのピアスは揉み和紙がクルンと巻かれていました!可愛い!!
『RENEW』の際は工房見学のチャンスあり!
この工場見学は、2018年に行われたイベント『RENEW』の際に行ったものです。
RENEWとは、2015年から毎年行われている産業観光イベントで、鯖江市、越前市、越前町を舞台に、越前和紙、越前漆器、越前打刃物、越前箪笥、越前焼などの伝統工芸品に触れることができます。
普段出入りできないものづくり工房の見学を通じて、作り手の想いや背景を知り、体験しながら商品の購入が楽しむことができます。
出典:RENEW/2018
というテーマの通り、普段は閉ざされた工房が解放され、見学をしたり、作り手からお話を聞いたり、ワークショップを通して技術に触れたり、実際に商品を購入したりとさまざまな体験ができます。
職人さんの工房にお邪魔できる機会はとても貴重なので、興味がある方は、ぜひ来年のRENEWをお楽しみに!
長田製紙所の基本情報・アクセス・マップ
名称 | (株)長田製紙所 |
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住所 | 福井県越前市大滝町29-39 |
電話番号 | 0778-42-0051 |
長田製紙所蔵開き&記憶の家オープン日 | 不定期(詳細はホームページなどでお知らせしています) |
交通アクセス | JR武生駅から車で20分 北陸自動車道 武生ICから車で7分 |
駐車場 | 3台(記憶の家横の神宮堂前) |
SNS | instagram @osadawashi Twitter @osadapapermill Facebook @osadawashi |
WEBサイト | https://osada-washi.jp/ |