小柳箪笥でオリジナルの家具を注文&手作り体験しました!【越前市・福井県の伝統工芸品と共に暮らす】
「福井県の伝統工芸品と共に暮らす」というテーマで、これまで越前和紙の間接照明や越前打刃物(包丁)などを取り上げてきましたが、今回は第3弾!越前市でつくられる伝統工芸品の『越前箪笥』をリビングにお迎えしたいと思います。
この記事では、越前市の『小柳箪笥』さんに家具のオーダーをしてから完成するまでと、体験などの様子も全て紹介します。
小柳箪笥さんに家具を注文!
越前箪笥の産地である越前市。
江戸後期から木工技術を持った職人が住むようになり、明治中期ごろには本格的なタンス造りの職人が中心となってタンス町をつくりました。
国道365線沿いの200mほどの道はタンス通りと呼ばれており、現在でも和洋家具のお店や建具商など、数十軒のお店が軒を連ねています。
今回訪ねたのは、タンス通りから歩いて数分のところにある『小柳箪笥店』さん。
明治40(1907)年に、指物屋として創業。
100年以上の歴史を大切にしながら、現代風のプロダクトも多数提案しているお店です。
(指物:板を差し合わせて作られた家具等のこと)
小柳箪笥を訪れた理由はもちろん『越前箪笥』をリビングにお迎えするため。
ですが、今回は単純に越前箪笥を購入するわけではありません。
なんと、オーダーメイド家具の注文をしちゃいます!
長い歴史やその中で培われてきた技術、特徴的なビジュアルなど、越前箪笥の要素をぎゅっと詰め込んだ家具を作ってもらう、というとってもわがままなお願いを、小柳箪笥さんは叶えてくれるのでしょうか…。
越前箪笥をリビングへ!オーダー家具ができるまで…
今回の私の希望は「ソファーに合うちょうどいい高さのテーブルが欲しい!」。
ソファーで食事をとることが多いのですが、今使っているテーブルはちょっと低くて、どうしても姿勢が悪くなってしまいがち。
ソファーに座っていても自然な姿勢で食事ができる高さのテーブルが欲しいけど、なかなかちょうどいい高さのテーブルが見つからない…、というのが最近の悩みでした。
越前箪笥の職人さんにテーブルを作ってもらうの?
どういうこと?
と思うかもしれませんが、その全貌をお見せします!
初回 10/31:打ち合わせ
まずは打ち合わせから。
お店で出迎えてくれたのは、小柳箪笥の四代目・小柳範和さん。
小柳箪笥の四代目として生まれ、19歳の頃から修業を始めたベテランの職人さん。
「家具手加工1級技能士」、「職業訓練木工科指導員免許」を取得し、平成26年に伝統工芸士に認定されました。
(伝統工芸士:経済産業大臣指定伝統的工芸品の製造に現在も直接従事しており、試験実施年度の4月1日に12年以上の実務経験年数を有し、原則産地内に居住している者だけが試験を受けられる)
代々、語り継がれてきた伝統と指物技術を今も尚継承し続けながらも、木材を用いた型にはまらないクリエイティブなモノづくりを追求するべく日々、精進中。昨今では、『木』と『漆』の親和性と奥深さに改めて魅了され、杢目を活かす漆のさらなる可能性を探求している。
出典:小柳箪笥公式サイト
ということで、小柳箪笥では、越前箪笥らしさ満載のテレビボードなど、完全受注生産のオーダー家具も手がけています。
テレビボード
まずは小柳さんに小柳箪笥や越前箪笥の歴史・特徴を教えていただき、工房の見学もして、越前箪笥とはどういうものなのかを今一度確認しました。
実は、お店に入った時に目に飛び込んできたこの箪笥がとっても素敵で、こんなイメージのテーブルにしたい!というインスピレーションが一瞬でわいてしまいました。
それを踏まえて、
「ソファーでも使いやすい高さのテーブルが欲しい」
「できる限り越前箪笥らしいビジュアルにしてほしい」
といった要望を伝えました。
すると、簡単に設計図を書いてくれました。
店内には100万円近くする越前箪笥も展示されており、急に金額が心配になってきました!!
が、予算を伝えたところ、予算内でできる限りのものを作ってくださるとのこと。
そして、素材選びの下話もできました。
木の種類によって色が違うのはもちろんですが、同じ種類でもそれぞれ色が若干異なること、使う部分によって出来上がりの表情も違うこと、節はあったほうがいいのかどうなのか…など、素材ひとつ選ぶにもさまざまなポイントがあります。
「ダークブラウン系が好きなのでできるだけ暗めの色で…」とお願いして、それらしき素材を見せてもらいました。越前箪笥の大きな特徴である金具もつけるので、金具とのバランスも考えます。
この日は、大体の形、色のイメージをお話しして終了となりました。
2回目 11/27:打ち合わせ
初回打ち合わせから約1ヶ月。
お店に伺うと、前回お話ししたイメージが図面に起こされていました!
サイズもしっかりと記載され、より現実味が増してきました。
イメージに齟齬がないか、サイズはこんな感じで大丈夫か、予定している素材や色などを再確認し、今後のスケジュール調整に入ります。
今回は、できる限り自分の手で製作に携わりたい、という希望もあったため、作業工程の説明などもありました。
3回目 12/19:木目選び、金具削り
この日からいよいよ製作に取りかかっていきます。
木目選び
まずは、木目選びから。
前回伝えたイメージをもとに、適した木材をある程度選んでくれていましたが、木には一つ一つ表情があります。
木目を目立たせるのか、あえて節を使うのか、どの順番で木を並べるのか、などを相談しながら使う木を選びます。
天板は節がないように、逆に脚には節を使って表情をつけて…
どの木のどの部分をどこに使うかを細かく決めて、木目選びが終了。
次回までにこれをカットして、組み立てられる状態にしておいてもらえるそうです。
金具削り
続いて、越前箪笥の大きな特徴である金具作りに取り掛かります。
目指すのはこの形。
魔除けの意味を持つ「猪目」(ハート型の部分)と、いいことが起こる前兆と考えられている「雲」があしらわれた、縁起の良い形の金具です。
用意されていたのは、手前の金具。
これから真綿焼き、焼き漆の作業を経て色が変わっていくので、この時はまだ銀色。
この金具を、奥側の金具の形を目標に削っていきます。
これは削っている途中の様子。左側の2つの雲と、右側の3つの雲。
曲線の様子がちょっと違います。
最初に用意された金具は機械でスパッと抜き取られたものなので、断面がまっすぐなんです。(左側の2つの雲)
それを、削ることで斜め45度の角度をつけて、より立体的に見せる(右側の3つの雲のように)のが、この作業の目的。
金具は全部で4つ使うので、2つはプロに任せて、残りの2つを夫と分担。
「どっちがきれいにできるかな〜」と話しながら、ひたすら削っていきます。
細かい曲線もたくさんあるので、数種類のヤスリを使い分けながら丁寧に削っていきます。
作業を初めて数分で右手が痛くなりましたが、なんとか最後まで削りきることができました。
1つの金具を削るのにかかった時間はなんと2時間以上!
一般的な越前箪笥には金具が数十個は使われているそうなので、箪笥一つにどれだけの手間がかかっているのかを考えるだけで気が遠くなりました。
ちょっと立体感が出たのがわかりますか?
完成したら、こんな風にテーブルの四隅につく予定です。
さらに、見えるか見えないかの大きさで、さりげなく自分のイニシャルを入れました。
実は金具削りを最初から最後まで自分の手で体験した人は、私たちが初めてだったそう。
「ちゃんとできるかなと思っていたけど、上手にできてますよ」とお世辞混じりのお褒めの言葉をいただき、ホッとしました!
作業初日で一番楽しいところが終わってしまったのでは!と思うくらいに楽しい体験でした。
この後、この金具はどうなっていくのでしょうか…。
4回目 1/15:組み立て・真綿焼き
約1ヶ月後に伺うと、前回選んだ木がカットしてつなぎ合わされており、テーブルの形が見えてきていました。
天板部分
越前箪笥は釘を一切使わず、「組みつぎ」という技法で組み立てられるので、ここではその体験をさせてもらうことに。
これが、
こうなるわけです。
組み立て
組みつぎは一気に板同士を組み合わせるので、まずは全体に接着剤を塗っていきます。
そして、一気に合体!トンカチで叩いて下までしっかりはめ込みます。
完成形がもう見えてきました!
接着剤をふいたら、クランプでぎゅっと締めます。
続いて、こちらの大きな機械に移動して…
さらにプレスします。
しっかりはめこんだはずなのに、押された分だけ接着剤がたっぷり出てきていました。
これを拭いたら、1日程度放置します。
この日の組立作業はここまで。
真綿焼き
続いて、金具の真綿焼きを行っていきます。
最終的に目指す金具の色はこちら。
でも、私たちの金具はまだこの色。
ここから完成形の色に近づけていくわけですが、そのための第一工程が真綿焼き。
まずはバーナーで金具を熱します。
目指す温度はだいたい500℃。
表面がグレーがかったらいい温度の合図です。
赤いと高すぎる、青いとまだまだ…。
全て目で見て温度を確かめます。
色が変わったら、すぐに真綿(繭)をこすりつけます。
予想以上の煙にびっくり!
しかも、ちょっと独特のニオイが…。
しかしそんなことを考えている暇はなく、金具が冷める前に一発で全体に真綿を焼き付けます。
出来上がったものがこちら。(左)
右が小柳さんが焼いたもの。
作業しているときはうまくできたと思っていたのですが、出来上がりは一目瞭然。
温度が高かったようで、私のものは表面がだいぶザラザラしてしまいました。
難しい…。
ここでも職人さんの技術のすごさを実感しました。
5回目 1/30:やすりがけ・着色
いよいよ作業も大詰め!この日はやすりがけと着色をしていきます。
やすりがけ
全体がなめらかになるように、電動のヤスリを軽くかけます。
出来上がりは本当になめらかですべすべに!
頬ずりしたいくらい!笑
着色
いよいよ作業も佳境に。続いては着色をしていきます。
本物の越前箪笥の定義からいえば、着色は漆塗りでなくてはいけません。
が、今回は予算の都合もあり、漆ではなく通常のペンキを使います。
目指すのは、左上の色。
1回目の着色で右側の色、2回目の着色で左下の色、さらにウレタンを塗って完成の予定です。
刷毛にたっぷりとペンキを取って、
塗って、
拭いて、
乾かしてまた塗って、
拭いてを繰り返して、
2度塗りが終わったテーブルはこんな感じに!
塗るたびに拭き取ることで、元の木目が生きた良い風合いになりました!
6回目 2/26:金具取り付け→完成!
最終日は金具の取り付けをして完成です。
前々回真綿焼きをした金具は、小柳さんによって焼き漆の作業が施され、しっかり完成していました。
イニシャルも見えます!
焼き漆
焼き漆の作業は、バーナーで熱して、
漆を塗る。
この作業を最低5回は繰り返すそうです。
金具取り付け
前回2度塗りしたテーブルは、小柳さんがウレタン仕上げをしてくださり、ほぼ完成していました。
あとは四隅に金具を取り付けて完成です!
まずはドリルでしっかり穴を開けて、
釘を打って、
完成です!
ただ、これだけだとちょっと和風すぎる&まだ高さが足りないので、ガラスをのせて、
これで本当の本当に完成です!
打ち合わせから丸4ヶ月。
すごく時間がかかりましたが、イメージ通りのテーブルができました。
一つ一つの作業がとても繊細で、一つのものを作るのに随所にこだわりがあることがわかりました。
越前箪笥の歴史、それを作る職人さん、全てに感謝と敬意の気持ちでいっぱいです。
今回小柳さんと一緒に家具を作ったことは、本当にいい思い出になったと感じています。
大好きな福井の伝統に触れられただけでなく、夫と2人で力を合わせて一つのものを作り上げられたこと、これからの長い人生で、このテーブルがずっと私たちの生活の中心にいてくれるであろうこと。
そういうことに、すごく価値を感じました。
小柳箪笥の基本情報・アクセス・マップ
店名 | 小柳箪笥 |
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住所 | 福井県越前市武生柳町10-7 |
電話番号 | 0778-22-1854 |
営業時間 | 11:00〜18:00 |
定休日 | 不定休 |
交通アクセス | JR武生駅から徒歩16分 北陸自動車道 武生ICから車で約10分 |
駐車場 | 店舗前に数台分あり |
SNS | instagram @echizentansu.oyanagi Twitter ー Facebook @echizentansu.oyanagi |
WEBサイト | http://oyanagi-tansu.jp |