風を食べて動く生命体!?テオ・ヤンセン展inふくいでストランドビーストに感動!
突然ですが、まずはこちらの動画をご覧ください!
電気が使われているわけでも、誰かが操作しているわけでもなさそうですが…
実はこれは『ストランドビースト』と呼ばれるもので、その正体はなんと「風を食べて動く生命体」。
…と言っても全く意味がわからないと思うので、行ってきました!
『テオ・ヤンセン展inふくい』
鯖江市と越前市の境にあるサンドーム福井で、2019年9月21日から10月27日まで開催されているイベントです。
会場内には無数のストランドビーストが!
開催中は毎日、冒頭の動画のように動くストランドビーストが見られる『リ・アニメーション』が90分おきに実施されています。
リ・アニメーションでは、ストランドビーストが動く様子を見ながら、仕組みや機能を学べます。
生き物なの?
アートなの?
どうやって動いているの?
私も最初は疑問ばかりでしたが、リ・アニメーションで勉強してきました!
ストランドビーストとは
アニマリス・オムニア・セグンダ
オランダの芸術家・物理学者であるテオ・ヤンセン氏が生み出した『ストランドビースト』。
ストランド=砂浜、ビースト=生命体 を意味し、その名の通り備わっている機能や動く様子は本物の生き物のよう。
材料(細胞)は身近な素材ばかり
しかし、複雑に見えるストランドビーストですが、その体は意外にもとても身近な材料でできているんです。
ストランドビーストの関節も足も、体のほとんどがプラスチックチューブでてきています。
そのほか、結束バンド、ペットボトルなども使われていますが、ナットやクギのようなものは使われていません。
風を食べて動く【歩行】
テオさんは、ストランドビーストに「どんな機能があれば砂浜で生きていくことができるか」を常に考えています。
代表的な機能が「歩く」。
リ・アニメーションで最初に登場したのは、2018年に制作された最新シリーズ『アニマリス・オムニア・セグンダ』。
「オムニア」はラテン語で「全て」を意味します。
その名の通り、これまでの進化の過程で生まれたあらゆる機能を合わせ持っています。
体重160kgもある体が風の力だけで前へ進んでいく様子に驚きましたが、一体どのような仕組みになっているのでしょうか。
オムニアは、風が穏やかになると羽を広げて風を受ける準備をします。
風を受けると羽がパタパタと動き、クランクシャフト(凹凸の部分)が回ります。
その先にはポンプがついていて、羽が動くと空気のポンプから体の中に空気を送り込み(風を食べて)、歩くことができます。
ポンプの仕組みは動画の通り。
空気がくると、自転車の空気入れのように細いチューブが出たり入ったりします。
風がなくても胃袋の空気で動ける【空気の貯蔵】
でも、風がなかったら?
オムニアの体には「胃袋(=ペットボトル)」がついているので、ここに緊急用の空気を貯めておくことができます。
だから風が吹いていなくても、お腹の空気で歩くことができるんです。
風から身を守る【ハンマーで杭を打つ】
しかし、風が強すぎると飛ばされてしまうことも。
そんな時オムニアは羽を折りたたみ、飛ばされないように身を守ります。
さらにオムニアには頭にハンマーがついています。
ハンマーで杭を砂浜に打ち込み、風に飛ばされないようにしたり、杭を軸にして体の向きを変えることで風の抵抗を小さくしたりすることができます。
進む向きを変えることができる【水感知・方向転換】
オムニアは普段オランダの砂浜にいますが、オランダは海抜が低く、潮が満ちてくると砂浜が海の中に飲み込まれてしまいます。
それはオムニアも同じ。
しかし、オムニアは自分の判断で海から逃げる術を持っているんです。
オムニアは自分の判断で後ろ向きに進むことができます。
頭の下に触手(チューブ)が垂れていて、水があることを感知すると進む向きを変えるんです。
ここまでくると本当に「生命体」のようです。
求愛行動を取り繁殖する【尾を振る】
アニマリス・アデュラリ
いくつかのストランドビーストが持っている機能に「尾を振る」という行動があります。
常に「体にどんな機能を持たせれば砂浜で生きていけるか」を考えているテオさんですが、この行動は何の役に立つのか、本人もわからなかったそうです。
そうして考えて行き着いたのが、求愛と繁殖。
ストランドビーストは求愛行動として尾を振り、繁殖活動をしているんです。
そして、その繁殖を手伝うのは私たち。
このような動きで人目を引き、ムービーや画像を周りの人に見せたり、SNSに上げることで「自分もストランドビーストを作ってみようかな」と思わせているんだとか。
最近ではテオさん以外にも、鉄、竹、ストローなど、さまざまな素材でストランドビーストを作っている人がいるそうです。
私もここでしっかり繁殖の手助けをしてますね(笑)
皆さんもこちらの記事をシェアして、ストランドビーストの繁殖を手伝ってあげてみては?
ストランドビースト×福井の伝統工芸品『越前和紙』
普通のストランドビーストは砂浜で生きるために、羽が強くないといけません。
そのため、羽はパラシュートの生地でできています。
しかし2018年に、福井の伝統工芸品『越前和紙』を羽に用いた2体のストランドビーストが作られました。
アニマリス・オルディス・クインタス
アニマリス・オルディス・クォータス
扇風機で風を送ると…
しっかり歩いています!
和紙は重ねることなく一枚もので、手揉み加工によりしなやかさを持たせている。
ヤンセンの考えるエコロジーの観点にも考慮し、和紙産地に古くから伝わるこんにゃく糊を使った加工手法を復刻させ、天然素材による丈夫さを実現させた。
引用:テオ・ヤンセン展inふくい パンフレット
近くで見てみると和紙の質感がしっかり見て取れます。
他のストランドビーストよりも柔らかな雰囲気を感じました。
ちなみに元々のモデル『アニマリス・オルディス』はBMWのCMのために制作されたものなんです。
いろいろなストランドビースト
他にもさまざまなストランドビーストが展示されています。
ストランドビーストには、進化の過程でそれぞれの時期に名前がついており、
例えば「前グルトン期」はビーストの原型をコンピュータの仮想空間に生み出した時期、
「グルトン期(テープの時代)」はプラスチックチューブの接合に粘着テープを使用、
「コルダ期」は粘着テープに代わって結束バンドを使用…
のように時代が整理されています。
年表を見ながら実物のストランドビーストを見てまわると、まるで本物の生物の進化の過程を辿っているようでワクワク。
ここでは、ちょっとだけその進化の過程をご紹介します。
大きなプロペラが特徴的『アニマリス・リジデ・プロペランス』
タピディーム期(熱が和らいだ時代 1994〜97年)に制作されたストランドビースト。
それ以前よりもヒートガンの温度を下げることで、耐久性を高めました。
アニマリス・リジデ・プロペランスは大きなプロペラが風で回転することによって高速で動きますが、プロペラが重いため長時間歩くことはできませんでした。
より生物らしく!『アニマリス・ペルシピエーレ・プリムス』
セレブラム期(脳の時代 2006〜08年)に作られたストランドビーストは、水感知、方向転換などができるようになり、より生物らしくなりました。
弱い風でも前進する『アニマリス・プラウデンス・ヴェーラ』
アウルム期(微風の時代 2013〜15年)に制作されたストランドビースト。
それまでは強い風がなくては動けませんでしたが、大きな帆によって、弱い風でも前進できるようになりました。
「プラウデンス・ヴェーラ」とは三つの帆の意味で、その名の通り3つの層に重なった大きな帆が風を受けて前進します。
こちらは長崎オランダ友好400年を記念して作ったモデルで、400年前に長崎とオランダを結んでいた帆船がモチーフになっています。
当時の船と同じく、前にしか進めないのが欠点。
キャタピラ型が進化『アニマリス・カリブス』
ヴァポラム期(蒸気の時代 2001〜06年)には、これまでのストランドビーストとは全く違った「キャタピラ型ビースト」が誕生しました。
テオさんはそれらを進化させて前進できるようにしました。
これをブルハム期(キャタピラの時代 2016年〜)と呼んでいます。
『アニマリス・カリブス』もブルハム期に作られたもの。まるで毛虫や蛇のように動きます。
単純な構造なので体の中に砂が入りにくい、凸凹のある地面でも乗り越えて歩いていけるといったメリットがあります。
NASAが活用を検討中『アニマリス・ウミナミ』
その名の通り「海の波」のように元気に砂浜を駆け回ります。
丸く畳むことができ、NASAが惑星探求のために活用できないか検討しているとか。
アートの域を超えていますね…‼︎
テオヤンセン展に来るまでは、ストランドビーストは「風の力で動くアート」だと思っていました。
しかし、実際に動く様子を見て、進化の過程を知ると、水を感知して方向を変えたり、風がなくても貯蔵した空気で動くことができたり、まさに「生命体」であることがわかりました。
この感動は実際に生で見てみないとわからないと思うので、お時間のある方はぜひ足を運んでみてほしいです!
会場では自分でストランドビーストを押して動かすブースもありますよ!
ゴロゴロと動く振動が手に伝わってきてちょっと気持ち悪かったですが、それが可愛くも感じてしまいました。
ストランドビーストの仕組み
役目を終えたストランドビーストは「死」を迎えたとされ、使われていた「細胞」は「化石」となると考えられています。
化石となったストランドビーストの細胞
会場入り口にはこのような展示や、年表や材料、仕組みがわかる展示があり、ストランドビーストを深く知ることができます。
また、会場では、うちわの風で動く「ミニビースト」が販売されていました。
自分で組み立てることで、ストランドビーストの仕組みがよりよくわかりますよ!
はぴりゅうファンへ【おまけ】
福井国体のマスコットキャラクターとして誕生し、国体終了後も絶大な人気を誇る「はぴりゅう」くん。
なんと、世界で初めてストランドビーストを動かしたゆるキャラなんですよ!
私が訪れた時も、はぴりゅうくんがストランドビーストの解説のサポートをしっかり務めていました!
最後にはぴりゅうファンの皆様のために、はぴりゅうくんが活躍したシーンだけをまとめた動画を貼っておきます!
テオ・ヤンセン展inふくいの基本情報・アクセス・マップ
イベント名 | テオ・ヤンセン展inふくい |
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開催地 | サンドーム福井 |
住所 | 福井県越前市瓜生町5-1-1 |
電話番号 | 0778-22-6021 |
開催期間 | 2019年9/21(土)~10/27(日) |
開館時間 | 10:00~17:00(最終入場 16:30) |
観覧料 | 大人1000円 大学生 800円 高校生以下無料 (ペア、団体割引、前売り券あり) |
アクセス | JR鯖江駅から徒歩約15分 福井鉄道福武線 サンドーム西駅(上鯖江)から徒歩約15分 JR鯖江駅から車で約3分 JR武生駅から車で約10分 北陸自動車道 鯖江ICから車で約5分 北陸自動車道 武生ICから車で約7分 |
駐車場 | あり |
WEBサイト | https://theojansen-fukui.jp/ |
SNS | instagram @theojansen_fukui Twitter @theo_fukui Facebook @theofukui |