チラムネの聖地!地元の人々に愛される鉄板焼き屋さん『蛸八』【福井市】
福井市を舞台にした青春小説『千歳くんはラムネ瓶のなか』、通称『チラムネ』。
主人公の高校生たちが福井で過ごす青春を描いたノスタルジーを感じる物語が人気で、作中に登場するスポット(=聖地)を巡りに県外から訪れるファンも多数。
今回は、チラムネの聖地でもあり、学生をはじめとした地元の人々にも愛される鉄板焼きのお店『蛸八(たこはち)』をご紹介します!
昔ながらの空気が残り、素朴な温かみで愛される『蛸八』
福井市、藤島高校のすぐそばに、昔懐かしい雰囲気でどこか心を惹かれるお店があります。
このお店が、今回ご紹介する鉄板焼き屋さん『蛸八』。
お腹を空かせた学生たちに寄り添い、地元の人々に愛され続けています。
1987年に開店したお店の引き戸をガラガラッと開くと、店内からは食欲をそそられるソースの匂いが。
お腹を空かせて中に入れば、まるで実家に帰ったかのような、昔ながらの空気が残った素朴な温かみのある雰囲気に包まれます。
このお店のおすすめポイントは、おいしいごはんはもちろん、温かく魅力的な人柄で親しまれる店主のおばちゃん。
気さくで、常連さんとの間で交わされるテンポの良い会話や愛あるいじりが他のお店にはない魅力になっています。
30年以上地元の学生のお腹を満たしてきた蛸八は、かつて学生として通っていた大人の方々が今も常連として通っているほど愛されています。
さらに、県外から来るお客さんも。
実はここ、全国にファンが存在する小説『千歳くんはラムネ瓶のなか』(『チラムネ』)に出てくるお店のモデルになった聖地としても人気なのです!
チラムネで主人公の高校生たちが訪れる『蛸九』のモデルになったお店
チラムネは、福井の高校生が過ごす青春をノスタルジックな筆致で描く作品。
福井市内の色々なスポットが作中に登場しており、蛸八(作中では『蛸九』)もそのうちのひとつです。
主人公たちが通う高校の近くにあり、ごはんを食べに度々訪れます。
おばちゃんもそのまま登場しており、主人公たちと軽快な会話を繰り広げるシーンが印象的です。
実は蛸八は、作者の裕夢さんが高校時代に通っていたお店。
おばちゃんも高校時代の裕夢さんのことを覚えていて、少しお話を伺うことができます。
野球部だった裕夢さんは部活仲間と一緒によく食べに来ていて、おとなしい青年という印象だったそう。
そして、もうお気づきの方もいるかもしれません。
なんとこのお店では、作中に登場するおばちゃんとお話ししながら、主人公たちが食べているやきそばを食べられる。
つまり、作品世界をリアルに味わうことができるのです…!
やきそばが絶品!蛸八オリジナルの『たれ焼』
蛸八に来たらぜひ食べてみていただきたいのが、『たれ焼』!
具材はシンプルに、豚肉とキャベツのみ。
甘辛さが癖になる蛸八オリジナルのたれと、福井市内の製麺所に特注で作ってもらっているというそばが絶妙に絡み合います。
素朴で、どこか懐かしさを覚える味でありながら、店主さんの確かな料理の腕と込められた愛情を感じる、ここでしか食べられない逸品。
これが本当にめちゃくちゃおいしい!ペロっと食べ終えてしまいます(筆者もとても好きな味で、週に二回食べに行ったこともあるほど!)。
学生がお腹いっぱいになるように、と作った『ジャンボ』
蛸八がお店を構えるのは藤島高校のすぐそば。近くに福井大学もある、学生のまち。
「お金はないけど食べ盛りの高校生や大学生にもお腹いっぱい食べてほしいと思って、そば3玉を使ったジャンボを作り始めた」と、店主のおばちゃんこと水上眞知子さん。
以前通ってくれていた野球部の学生たちは、練習終わりにジャンボを食べ、お好み焼も食べて、家に帰って晩ごはんを食べていたそうです。
「あの時のメンバーすごく面白くて、今でも覚えてる」と、当時の学生の名前も挙げながら話してくださったおばちゃんに、30年以上学生たちを見てきた面倒見の良さと、このお店が愛され続ける理由を感じました。
実は、そんな昔の学生たちとの思い出が詰まったアルバムがレジ下の棚に並んでいます。
蛸八の歴史も感じられる素敵な写真たちがいっぱい詰め込まれていました。
蛸八の物語が気になる方は覗いてみてください。
【インタビュー】お客さんと話すのが楽しくて
最後に、蛸八のおばちゃんにインタビューさせていただきました。
といっても、お客さんから大人気のおばちゃん。
お話を伺っている間も常連さんから話しかけられ続けていました。
中にはお客さん視点でインタビューの質問に答えてくださった方も。
「お店を始めたきっかけは、最初はおじさん(=旦那さん)に引きずり込まれてやってるだけで、手伝いさせられてたの。ここに来る前は金沢のショッピングセンターで営業していて、そのときはハンバーガーも作って出してた」
当時から変わらない『蛸八』という名前の由来は、お店を開くときに見学させてもらった東京のお店『蛸八』からとっているのだそう。
どんな想いでお店に立っているのかを尋ねてみると、
「家にいると動くのもしんどいけど、ここに来るとしゃんとする。どんな気持ちかというと、『今日も一日楽しくやりたいな』という気持ちかな。
お客さんと毎日話すのが楽しくて、儲けることは度外視で借金してでもやりたいと思ってる」
普段の様子を見ていても伝わってきますが、お客さんとの会話をとっても楽しんでいるおばちゃん。
「(印象的なお客さんは)いっぱいいます。ここにも、そこにも。数えたらキリがない。病院の先生、税務署の人、鉄工所の人、大学生など、個性派ぞろいで困ってます」
これに対して「個性派ぞろいって褒め言葉だねぇ」と常連さん。
なじみの関係だからこそ繰り広げられるやりとりに思わずクスっとしてしまいました。
そんな常連さんに加えて最近よく訪れるようになったのが、チラムネの聖地巡礼に来たファン(通称『チラムネくん』)たち。
「チラムネくんたちは遠くの知らないところから来てくれることが多くて、面白い」と語ってくださりました。
最後に、これからどんなお店にしていきたいか、尋ねてみました。
「現状のまま。気張ってやりたくはなくて、お客さんにめちゃくちゃ気を遣うこともなく自分が良いと思ったやり方でやっていくだけ。昔来てた子がまた来てくれたら嬉しいし、初めて来てくれた人には少し身構えてしまうけど、来てくれると嬉しい」
隣で話を聞いていた常連さんからは、
「ここは愛のある場所。おばちゃんは気のない返事をしているように見えて、実はお客さんの顔と名前、仕事、誰と友達かなどをしっかり覚えているのがすごい。それでいておばちゃんは良い感じに話を聞き流してくれるから、憂さ晴らしもできるし、常連同士の繋がりも生まれる、土地に根付いたお店だね」
と、蛸八とおばちゃんへの愛に溢れた素敵なコメントをいただきました。
おわりに
チラムネの聖地としても注目度が高まっているお店、蛸八。
昔ながらの空気が残った、味わい深くて心を惹かれる外観のお店に入るとそこは、愛に溢れた場所でした。
筆者もチラムネファンとして訪れたのがきっかけで、おばちゃんとこのお店の味のファンになり、京都から通うほどに。
どこでも同じサービスを受けられるお店がどんどん増えている世界で、ここにしかない素敵なお店。ここまでお読みくださったあなたも、一度足を踏み入れてみては?
蛸八の基本情報・アクセス・マップ
店名 | 蛸八 |
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住所 | 福井県福井市大宮2-8-5 |
電話番号 | 0776-24-7763 |
営業時間 | 11:00~20:00 |
定休日 | 月・火曜日 |
交通アクセス | えちぜん鉄道田原町駅から徒歩10分 北陸自動車道福井北ICから車で15分 |
駐車場 | あり(3台) |
Wi-Fi/コンセント | あり/なし |
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