未成年による酒造りプロジェクト!?若杯者に参加してきました!【若狭地方】
若狭地方(福井県南部)は三方五湖、瓜割の滝、北川など、ラムサール条約や名水百選に登録されている、きれいな水が豊富な土地です。水のきれいなところには美味しいお酒があるとよく言いますが、この若狭地方も例外ではありません。
実は私、すっごくお酒が好きで、特に日本酒は大好物!今までに福井の様々なお酒と出会ってきましたが、先日、こんなにフルーティーなお酒初めて!と思うような飲みやすい日本酒に出会いました。
その名も、「若杯者(じゃくはいもの)」。
一体どこで造られているのだろう?
気になって調べてみると、この若杯者は、主に若狭地方の”19歳の若者たち”によって造られているということが判明!
なぜ未成年が日本酒造り?とっても気になったので、その真相に迫りました。
若杯者プロジェクトとは?
この、未成年による日本酒造りは「若杯者プロジェクト」と呼ばれています。「若者の地域参画や体験を通した教育」を目的として2014年から行われているプロジェクトです。
一言でまとめると、地元の19歳が田植えから始まる日本酒造りの全工程に関わり、完成した日本酒「純米酒 若杯者」を、メンバーが成人を迎えた後に酌み交わすというもの。
「若杯者プロジェクト」が始まった経緯
「若杯者プロジェクト」発起人の中嶌さんは、数年前から、地元の里山を上手に活用していこうとする活動をライフワークとされてきました。
例えば若狭で繁殖し過ぎてしまっている「アブラギリ」。
この植物を、再生可能エネルギーの観点から地元の若狭東高校と一緒に研究したり、小浜市の無住となってしまった山村、上根来(かみねごり)で、元住民の方と天然食品貯蔵施設「雪室」を作ったりと様々な活動をされています。
こういった活動の中で、地方の大きな問題である耕作放棄地について考えるようになったそうです。そこで、大阪で行われている「19歳の酒」という取り組みからアイデアを得て、関係者の方の承諾を取った上でスタートしたのが「若杯者プロジェクト」なんです。
プロジェクトの実行委員は、お酒とは直接関係のない職業の方がほとんどで、まちづくり、町おこしに興味がある方が自然と集まって運営が始まりました。
実行委員、参加者の方々は、若狭町にある鳥浜酒造さんを借り、社長の小堀さんから酒造りの指導を受けて一から酒造りに取り組んでいます。
若杯者プロジェクトの1年間
若杯者プロジェクトでは、お酒の原料となるお米の田植えから瓶詰め、ラベル貼りまでを行うので、お酒が完成するまでに8ヶ月もの時間を要します。
田植えからラベル貼りまでの約8ヶ月。若杯者プロジェクトではどのように酒造りを行っているのか見ていきましょう!
5月 田植え
酒造りは、原料となるお米の田植えから始まります。
日本酒づくりには、普段私たちが食卓で食べているものとは違い、山田錦や五百万石といった日本酒用のお米が使われます。しかし、若杯者には食米であるコシヒカリが使われています。
それが若杯者のフルーティーさの秘訣なのかも!お酒に慣れていない新成人もこれなら飲みやすいと思います。
田植えは毎年手作業で、最近は福井県立大学の学生が主に参加してくれています。
手作業かつ慣れていないため、終わってみると稲はぐねぐね曲がった状態で植えられていたり…ちょっと不恰好な見た目の田んぼになりますが、これも学生たちのいい思い出になりそう。
公式ブログで第3期の田植えの様子をチェック→http://www.jakuhaimono.com/1939
6月 草むしり
雑草が生えていると、田んぼの栄養を雑草が持っていってしまうので、米作りでは定期的な草むしりが欠かせません。
若杯者プロジェクトでは、毎年1回イベントとして草むしりを行っているとのことで、今回は私も草むしりに参加してきました!
田んぼの中にまで入ったのは初めてだったので、その深さにびっくり!スネの半分くらいまで埋まってしまうほど深いんです。
おたまじゃくしやカエルなど、田んぼの生き物にもたくさん出会えて楽しい!
肝心の草むしりですが、これがなかなか難しい。というのも、稲と雑草が似ていて見分けがつかないんです。
若杯者に協力してくれている木村さんから、「稲は葉が枝分かれする部分に毛が生えています」と説明を受けましたが、泥だらけで何が何だか…。
参加していた県大生も草むしりよりも泥遊びに夢中になっていましたが、なんとか草むしりが終了。
頑張った後は、川辺でバーベキューをしました。
川にも田んぼと同じく学びがいっぱい!魚をとったり、鹿の骨を観察してみたり、子供達も大喜びでした。
毎年このバーベキューを楽しみに若杯者に参加する大学生も多いんだとか。
公式ブログで第3期の草無理し&BBQの情報をチェック→http://www.jakuhaimono.com/1951
7月 酒蔵見学
若杯者プロジェクトに協力している鳥浜酒造さんは大正9年創業で、酒蔵は登録有形文化財でもあります。7月には、鳥浜酒造への見学も行われます。
この場所で古くから行われてきた日本酒造りに思いを馳せるだけで、なんだかわくわくしてきますよね。
7月 おちょこ作り
鳥浜酒造見学の後は、若杯者を飲むためのマイおちょこづくり!若狭町で1000年以上の歴史がある須恵野焼き(すえのやき)でお猪口を作ります。
自分だけのおちょこを作ることで、若杯者を飲むのがより楽しみになりますね。
若杯者の完成まであと半年!
9月 稲刈り
9月にはいよいよ稲刈りが行われます。若杯者はこれも手作業。
一反(300坪)の田んぼに育った稲を手作業で刈るのは大変な作業ですが、日本酒作りはここからが本番です!
公式ブログで第3期の稲刈りの様子をチェック→http://www.jakuhaimono.com/1957
11月 麹造り
日本酒を作るには、3つの要素が必要になります。
- 麹=蒸し米+黄麹菌
- 酒母(もと)=蒸し米+水+麹+酵母
- 醪(もろみ、やがて原酒となるもの)=酒母+麹+蒸し米+水
そのため、日本酒造りの最初の工程は麹作りから始まります。
種切り(床揉み)
まずは一部の麹米を洗米して蒸し、麹菌をふりかけます。
切返し→盛り→仲仕事→仕舞仕事(しまいしごと)→出麹(でこうじ)
種切りから約10〜16時間後に切返しを行います。切返し〜出麹までは、それぞれの工程で目安の温度があるため、温度を管理しながら混ぜたり酸素に触れさせたりという作業を行います。
種切り〜出麹まではトータルで50時間ほどかかり、1時間おきに米の状態をチェックするため、参加者は夜間も交代で麹番を行います。
ハタチ目前にして、日本酒造りにどれだけの手間がかかっているのか、身を以ての体験です!
公式ブログで第3期の麹造りの様子をチェック→http://www.jakuhaimono.com/1963
11月 仕込み
若杯者になるお米の総量は約100kg。そのうちの20kgを麹に、80kgを掛け米として使います。(米を100kg仕込んでできるお酒は180ℓくらい。720mlの四合瓶だと250本分ほどになります。)
麹米、酵母に蒸した掛け米を加えていきますが、この時も温度管理がとっても重要!
麹造りに引き続き、デリケートで重労働な作業をこなしてやっとお酒造りも佳境に入ります。
公式ブログでも仕込みの様子をチェック→http://www.jakuhaimono.com/1965
12月 醪絞り
醪絞りはクリスマス頃に行われます。
田植えから絞りまで7ヶ月も若杯者に関わってきた新成人にとっては感動の瞬間!
ここで、絞りの際にできた酒粕にも注目!
私も数年前の醪絞りに参加しましたが、前日までに絞りはほとんど終了していたため、お酒の出来高の計測や後片付けに参加させていただきました。この時に、酒粕が入っていた袋を手洗いしたのですが、手がとってもすべすべになったんです。昔から酒造りをしている女性は肌がきれいと言いますが、短時間でも驚くほどの酒粕パワーを感じました。
この酒粕は一般に販売されることはほとんどなく、プロジェクトに関わったメンバーや知り合いに配ることが多いそうです。しかし、若杯者の酒粕を使って商品を作りたいという問い合わせも増えているため、お近くの方はまちのパン屋さんやお菓子屋さんで、若杯者を使った商品を目にすることができるかもしれません!
12月 瓶詰め→火入れ→打栓
いよいよお酒となった液体をビンに詰めていく作業です。瓶を洗浄し、機械で瓶詰めしていきます。
瓶詰めのあとは、ビンをお湯に入れて低温殺菌。そして、打栓器で栓をすれば、ほぼ完成!
12月 ラベル貼り
この後、ラベルを貼って、ようやく若杯者が完成します。
「純米酒 若杯者」のラベルは地元の伝統文化である若狭和紙を使っています。
2015年度に私もラベル貼りに参加しましたが、その年は自分たちの手ですいた和紙をラベルに使用していたので、1枚1枚厚さが違い、若杯者に携わった方1人1人の想いが伝わってくるようでした。
1月 解禁
「純米酒 若杯者」の解禁日は毎年成人の日。
若狭町、敦賀市、美浜町、小浜市、おおい町、高浜町の成人式実行委員会に贈呈されます。また、小浜市と高浜町にあるハマセ酒店さんや地元のスーパーなどで販売されるそうです。
手絞りで限られた本数しか製造されていないので、見かけた方はとってもラッキーかも。
商品のご案内→http://www.jakuhaimono.com/product
2月 雪室入り
2月には、中嶌さんが作った上根来の雪室に若杯者をいれます。雪室で熟成させることでまろやかになり、夏にはまた違った味わいの若杯者が楽しめるようになるんです。
こちらは毎年数量限定で販売するとのこと。見かけたらぜひ買ってみてください!
去年雪室に入れた雪室熟成の若杯者はこんな風に!→http://www.jakuhaimono.com/1949
3月 乾杯式
若杯者に参加した全員が20歳を迎えたら、お世話になった方も交えて、若杯者で乾杯します。
若杯者の成果・課題
私も日本酒がとても好きなんですが、飲む専門で、日本酒がどのように造られているのかは全く知りませんでした。
しかし、この若杯者プロジェクトに一瞬でも参加したことで、普段飲んでいる日本酒がどのように造られているのか、どれだけの人の手や時間をかけて手元に届くのか、少しでも知ることができました。
田植えから携わっている19歳は、それ以上に感じることが多いはずです。
農業の後継者問題、耕作放棄地の問題、それ以前に、普段当たり前のように口にしているお米がどのように作られているのかなど…。「若杯者プロジェクト」に参加することで、農業に興味をもった方もいるはずです。
そして、日本酒は私たち日本人がこれから先も守り抜いていかなくてはいけない大事な文化だと思います。そういったものに触れられる「若杯者プロジェクト」は、とっても素敵な取り組みだと思います。
しかし、「若杯者プロジェクト」には19歳をどう集めるかという課題もあります。(もちろん20歳以上の参加も大歓迎だそうです!)
福井県立大学小浜キャンパスの学生さんがグループで参加してくれたり、過去の参加者がその後運営側にまわってくれることもあるそうですが、今後も続けていくことを考えると、大きな課題となりそうです。
学生さんのほとんどは県外出身なので、「若杯者プロジェクト」が福井県と関わりをもつきっかけとなったり、
地元の19歳もたくさん集まれば、そこで新たな交流が生まれたりすることも期待できそうです。
興味がある方は、ぜひ参加してみてはいかがですか?
若杯者プロジェクトに参加してみたい方はこちらでイベント情報をチェックできます→http://www.jakuhaimono.com/