日本一の廟所や多数の文化財!大安禅寺で歴史・仏の教えに触れよう!【福井市】
福井市の北西にある、国指定文化財の臨済宗寺院『大安禅寺』。
境内にはさまざまな文化財があり、どれも見逃せないのはもちろんのこと、和尚さんの人柄もとっても素敵でした!
そんな大安禅寺の魅力をたっぷり紹介します。
大安禅寺とは?
中国禅宗の開祖・菩提達磨
1200年以上前、時の高僧泰澄大師が竜王山田谷寺を創建し、越前の人々の信仰を大いに得ていました。
しかし織田信長が越前を攻めた際に全山が焼失してしまいます。
その霊地に、万治元年(1658年)、第4代福井藩主・松平光通が、時の名僧大愚宗築禅師に深く帰依し、松平家の永代菩提所として創建したのが大安禅寺です。
仏教にはさまざまな宗派がありますが、大安禅寺は臨済宗の禅寺です。
「座禅をする宗派」と言えばわかりやすいかもしれません。
臨済宗の寺院であることを象徴するように、中国禅宗の開祖、菩提達磨の迫力ある絵が建物の中にたくさん掲げられていたのが印象的でした。
大安禅寺の文化財
大安禅寺には文化財に登録されている建物が多数あります。
まず、大安禅寺の千畳敷を含む境内自体が、福井市指定の史跡となっています。
他にもたくさんの文化財があるので、見ていきましょう。
出典:萬松山 大安禅寺
国指定文化財・開基堂・塀中門
駐車場を降りて本堂に向かう途中、一番最初に目に入る文化財がこの開基堂(の門)です。
(すぐに本堂に向かおうとせずに、一旦下に下がると、こちらも国指定文化財の山門を見ることができます。)
開基堂は、延宝2年に亡くなった松平光通を弔うために、5代藩主の昌親が建立した建物。
木目を活かして拭き漆を施す霊廟建築となっています。
本堂横の阿吽庭から見た開基堂
開基堂手前にある国指定の文化財・塀中門
塀中門からまっすぐに道が伸び、奥に開基堂が佇んでいます。
こちらが開基堂正面の天井付近。
このすぐ下あたりに須弥壇(仏像を安置するための壇)があり、京都七条仏師康乗が作った光通坐像が収まった宮殿が安置されています。
扉が閉まっていて中を見ることはできませんが、金色、極彩色の扉だけでも圧巻です。
さて、ここで少し気になることが。
上の写真には、家紋が2つありますよね。
右は水戸黄門でもおなじみ、徳川家の葵の御紋です。
松平家の家紋は葵の御紋なのでこれは当たり前ですが、では左の家紋は?
こちらも見たことがある人が多いと思いますが、これは五七桐と言って、豊臣家の家紋です。
松平家に関係のあるお寺に豊臣家の家紋があるのはちょっと変ですよね。
しかし、これにはちゃんとした理由があるのです。
初代福井藩主・結城秀康は徳川家康の次男でしたが、家康からは冷遇されており、家康と豊臣秀吉が和解するときの条件として、結城秀康が豊臣秀吉のもとへ養子(人質)として差し出されます。
しかし、結城秀康は豊臣秀吉(正確には正室の北政所のようです)から実子同然の扱いを受け、大変可愛がられたそうです。
つまり、結城秀康があったのも、豊臣秀吉のおかげということになります。
大安禅寺を創建した光通公は結城秀康公の孫です。
大愚宗築禅師は大安禅寺入寺の条件として、禅の教えを以て光通公を諭します。
「今ここに頂いた御命のご恩に報いるとは、家柄や過去の因縁に囚われることではない。その因縁をもしっかりと受け止めて、ご供養していくことである」と。
その言葉から光通公は、祖先と両親へのご恩を忘れないためにと、藩祖秀康公の育ての親である豊臣家の家紋も奉るようになったそうで、これは全国でも大変稀なことだそうです。
国指定文化財・本堂
大安禅寺の本堂ももちろん国指定の文化財です。
平成20年6月に、本堂をはじめとする伽藍一体が国の重要文化財に指定されました。
御本尊は十一面観音菩薩で、行基(僧侶)作と言われる立像が安置されています。
また、北陸三十三観音霊場の10番目の札所ともなっていて、健康と縁結びのご利益があるとか。 大玄関からのぞむ本堂
国指定文化財・開山堂
4枚の屋根が全て三角形である宝形造の開山堂。
開山堂とは、そのお寺の最初の住職を祀る場所で、ここでは大愚宗築禅師の木像が安置されています。
ちなみに、境内の中心に本堂と庫裏、その周囲に開山堂、開基堂、鐘楼などが建っていますが、これらは、創建以降断続的に福井藩によって建てられたものだそうです。
国指定文化財・鐘楼
福井でしか採れない幻の石・笏谷石積の基壇の上に建つ鐘楼です。
平成5年の修復時には、大愚によって鐘の制作の経緯が記された棟札が発見されています。
光通公が鐘を寄付したいと申し出たところ、大愚宗築禅師が鐘というのは広く一国中(福井)の人々の勧化によって造るべきものであると進言したことから、光通公は城下に御触れを出して結縁者を募り、福井藩は鐘でなく鐘楼を建てることにした
出典:大安禅寺パンフレット
国指定文化財・宝蔵
この法蔵館では、
- 国指定文化財(旧国宝)の『絹本著色 羅漢図』
- 県指定文化財の『紙本著色 南蛮船風俗図二曲屏風』
- 県指定文化財の『絹本彩色 双雀の図(伝馬麟画)』
の他、歴代藩主から寄進された寺宝を多数見ることができます。
国指定文化財・廟所(千畳敷)
日本一の廟所とも言われている、福井藩歴代藩主の墓所『千畳敷』。
千畳敷は、光通公が両親や祖先の恩を思い、万治2〜3(1959〜1960)年までに作ったもので、初代藩主結城秀康の他、歴代藩主の霊を祀っています。
千畳敷という名前は、敷き詰められた笏谷石の石畳が1360枚もあることから。
四方は2m程の石柱玉垣、下は福井の名石・笏谷石が敷き詰められ、高さ4m近くある墓石が10基並んでいる姿は圧巻。
上野寛永寺にある徳川将軍の墓よりも大きいそうです。
こちらも門の表側には葵の御紋がありますが、裏には一回り大きな五七桐があります。
その他にも、大安禅寺では庫裡が国指定文化財となっています。
2018年11月からは国重要文化財の木造8棟を対象に、初の大規模保存修理事業が行われています。
360年前の創建当時の姿を取り戻すべく、約11年かけて本堂や庫裏などを解体修理するとのこと。
11年後の姿が楽しみです…。
その他にも見どころ満載の大安禅寺
たくさんの文化財がある大安禅寺ですが、その他にもまだまだ見どころはたくさん!
パワースポット的要素があるものが多かったので、ご利益があるかも…
布袋尊像
本堂向かいあたりにある布袋尊像。
七福神の一尊でもあり、実は中国四明山の僧で、名前は契此というそうです。
「常に笑顔で布の大袋を背負い、日常生活の具をこの中に収む」
商売繁盛、家内安全のご利益があるそうです!
縁結びの観音岩
本堂手前には、縁結びの観音岩(夫婦岩)があります。
この岩と観音様は平成4年の七夕の日に「良縁成就」の祈願岩として観音様とともに開眼供養されたものです。
2人の仲のいい男女が寄り添っているように見えませんか?
お水をかけて、夫婦健康祈願をしましょう。
向かい側の座禅岩にも何かご利益があるのか、気になります…。
阿吽庭
見学入り口から進んで本堂を通り、右手に進むと阿吽庭があります。
実はこの庭、普段は枯山水の美しい庭なのですが、この時は雪の時期で何も見えませんでした。
しかし、天気のいい日だったので、陽の光が差し込み、とても安らぐ景色が広がっていました。
開基堂から見た阿吽庭
枯木堂
開山以来340年、火災、震災などの難をのがれ 建物は殆ど当時のまま残されている大安禅寺ですが、この坐禅堂(枯木堂)は明治初期に老朽化のため取り壊され、平成8年に復興したものです。
広々とした畳敷きの部屋には、ここにも達磨絵が。
様々な催し物をしている大安禅寺ですが、第二・第四金曜日には、この枯木堂で金曜座禅会と法話が行われます。
座禅で心を落ち着け、身も心もリフレッシュさせるのもいいですね。
健康達磨
達磨絵がいたるところにあった大安禅寺ですが、見学の最後の方で、この健康達磨に出会いました。
自分の体で気になるところを触れると、痛みが和らぐのだとか。
最近左膝が痛いので、ゴシゴシ触っておきました。心なしか良くなったような…。
予約しておけば「おもしろ拝観」という、お寺の方による案内、坐禅体験、自由拝観のコースを楽しむこともできるので、より大安禅寺への理解が深まりそうですよ!
大安禅寺の大安玄峰和尚とお話してみた
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