養浩館庭園の見どころ解説!海外から高評価の知られざる穴場庭園とは【福井市・インスタあり】

かつて福井藩主 松平家の別邸であった養浩館。国の名勝にも指定されている風光明媚な庭園ですが、観光客で混雑していることがあまりないため、美しい景色を静かに眺めることができる穴場観光スポットなんです。
養浩館庭園歴史や見どころ、屋敷のつくりやインスタ映え抜群の写真などなど、養浩館庭園の全てを紹介します。
養浩館庭園ってどんなところ?
養浩館庭園は、江戸時代には『御泉水屋敷(おせんすいやしき)』と呼ばれ、福井藩主松平家の別邸として使われていました。
元々この場所は、藩の重臣である永見右衛門の屋敷地だったのですが、永見氏は2代目藩主忠直に成敗されてしまい、その後藩主の別邸になったと言われています。
養浩館庭園の成立時期は明らかになっていませんが、以下のことから、360年以上前からあったことは間違いないようです。
御泉水屋敷の文献上の初見は明暦2年(1656年)で、4代藩主光通の側室が御泉水屋敷において男子(権蔵)を産んだと福井藩の歴史書である『国事叢記』などに出てきます。
出典:養浩館庭園公式サイト
7代藩主の頃に今のような姿に整備され、幕末頃には洋式銃の製造所が設けられたり、明治時代に以降は迎賓館としての機能を果たしたりと、時代時代でさまざまな姿、使われ方をしていたようです。
また、『養浩館』と名付けられたのは、明治17年のこと。
第16代越前福井藩主 松平春嶽によって名づけられたそうです。
この御泉水屋敷が今見るような姿に整備されたのは7代藩主昌明(のちに吉品と改名、元5代藩主昌親)の頃とされてます。
吉品は従来の御泉水屋敷である「本御泉水」の改造・整備に加え、西隣に「新御泉水屋敷」を建て自らの隠居所としました。
この時、御泉水屋敷の敷地は最も広くなり、今の養浩館庭園・お泉水公園・歴史博物館を合わせた程の大きさとなりました。吉品没後の御泉水屋敷は、茶会・饗応の席や藩主一族の休養の場、住居などとして使われたようですが、その規模は新御泉水部分を縮小した元の御泉水屋敷の敷地に戻りました。
また幕末頃には洋式銃の製造所が設けられるなど時勢を反映した使われ方もしたようです。明治時代、廃藩置県によって福井城は政府所有となりますが、御泉水屋敷の敷地は引き続き松平家の所有地として、その福井事務所や迎賓館としての機能を果たしました。
出典:養浩館庭園公式サイト
そんな養浩館も昭和20年の福井空襲で焼失してしまい、その後、本格的な修復が行われることはありませんでした。
しかし、昭和57年に国の名勝に指定されたことで、復原工事が進められることに。
養浩館庭園は、増改築によって時代ごとに姿を変えてきましたが、現在の養浩館庭園は、文政6(1823)年に作られた『御泉水指図』を基本に復原されたものです。
養浩館庭園は世界からも評価されている!
北陸の庭園といえば、やっぱり金沢の兼六園。
しかし、実は海外で評価されているのは、兼六園ではなく養浩館庭園のほう。
アメリカで発行されている日本庭園の専門誌『スキヤ・リビング・マガジン』で毎年発表される日本庭園ランキングに、2007年に7位で登場してからは順位を落とすことなく毎年ランクイン。
2008年からは3年連続で3位にランクインしたこともあります。
養浩館庭園の四季を楽しもう!
では、そろそろ養浩館庭園の美しい姿に迫っていきましょう。
養浩館庭園は季節によってさまざまな姿を見せてくれるので、春夏秋冬、いつ訪れても美しい景色を楽しむことができます。
まずは四季折々の養浩館庭園の景色を見てみましょう!
春の養浩館庭園
5〜6月にかけての養浩館庭園では、カキツバタや花菖蒲を楽しむことができます。
緑と紫のコントラストが美しいですね。
夏の養浩館庭園
夏の養浩館庭園は、緑が本当に美しいんです。
夏の福井は暑さが厳しいですが、養浩館庭園の美しい緑と大きな池を眺めていると、自然と涼やかな気持ちになりますよ。
秋の養浩館庭園
夜間ライトアップの様子。夜間に開園する場合もあります。詳細は公式サイトでご確認ください
秋はやっぱり紅葉!
養浩館庭園の木々も黄色や赤に色づき、美しい姿を見せてくれます。
庭園内を歩きながら紅葉を楽しむのもいいですが、屋敷の中から庭園を見ると、より趣を感じられるのでおすすめです。
冬の養浩館庭園
福井県は雪がよく降る地域なので、冬の養浩館庭園では雪景色を楽しむことができます。
普段以上の静寂に包まれ、より趣のある景色が堪能できますよ。
養浩館庭園の見どころ【庭園編】
養浩館庭園は歩いているだけで美しい景色が楽しめるのでそれだけでも十分ではありますが、ちょっとしたポイントをおさえれば、より深く養浩館庭園を楽しむことができますよ!
回遊式林泉庭園
養浩館庭園は、大きな池が中心にあるのが特徴。
これを回遊式林泉庭園(かいゆうしきりんせんていえん)と呼びます。
中央に池があることで、岸辺からの眺め、屋敷内からの眺めと、場所によって異なる景色を楽しむことができる点が特徴です。
池の周りを一周したら、屋敷からの景色も楽しんでみましょう。
遣水(やりみず)
養浩館庭園はかつて福井城があった場所のすぐ近くに位置しています。
福井城の城下町では九頭竜川の水を使った上水道(芝原上水)が利用されており、養浩館庭園では、これを屋敷の東南部から幅広い水路で池に引き入れていました(遣水)。
室町時代以降、枯山水の庭園が流行したことから、遣水は衰退してしまったそうです。
残念ながら現在は芝原上水ではなく、地下水を汲み上げたもので、幅もかつてより狭くなっていますが、屋敷と遣水の趣ある風景は十分堪能することができます。
さらにこの遣水には、全国でも最大級の自然石の石橋がかかっています。
飛び石
御座ノ間(屋敷の中心の部屋)に続く飛石のいくつかには、三国産の『安島石』が使われています。
何気なく置かれた飛び石にも趣が感じられます。
臼ノ御茶屋の蹲踞(つくばい)
養浩館庭園には、かつて臼ノ御茶屋と呼ばれた茶室がありました。
茶室は場所の都合上復原されておらず、現在は基礎の石だけ確認することができます。
つくばいとは、茶室に入る前にお客さんが手を清める場所です。このつくばいには福井市の足羽山から取れる笏谷石が使われ、清水が湧き出るように底に穴があけられています。
このつくばい越しに屋敷を眺めるのも風情があっておすすめです。
岩島
養浩館庭園の北西には、動物が座っているように見える岩島があります。
この位置は、切石橋が架けられた水路、岩島、池、屋敷がまとめて楽しむことができるため、おすすめの鑑賞スポットでもあります。
養浩館庭園の見どころ【屋敷編】
養浩館庭園にある数寄屋造邸宅の中も、自由に見学することができます。
御茶屋
池の東岸にある御茶屋という屋敷が建物の中心です。
御茶屋は数奇屋造建築で、屋根は杮葺寄棟のむくり屋根となっています。
屋敷の建築様式の特徴は以下の通り。
- 数寄屋造建築:茶室を取り入れた建築様式
- 寄棟(よせむね):4方向に屋根面が傾斜している
- むくり屋根:屋根面が膨らんだ屋根
- 柿葺(こけらぶき):板葺の一種で、その中でも最も薄い、厚さ2〜3mmの杮板を使ったもの。この板をずらしながら重ねて屋根が作られている。古くから伝わる手法のため、文化財の建造物の屋根には杮葺が多い
養浩館庭園の屋根を再現したもの
養浩館庭園の建物の屋根には、なんと10万枚ものスギの杮板が使用されているんだそうです!
櫛形ノ間
池に面した櫛形ノ間は、窓が花頭くずしの連窓となっています。
花頭窓(かとうまど)は、上部が尖っているアーチ状の窓の名称。
この形がまるで櫛のようであることから、櫛形ノ間と呼ばれていると言われています。
窓越しに池を眺めると、かなり雰囲気がありますよ。
御次ノ間・御座ノ間
御座ノ間が屋敷の中心の部屋です。
柱は杉丸太、天井は椹(さわら)という木の板を使った棹縁天井(さおぶちてんじょう)となっています。
池に面しているので開放感たっぷり。
居心地も景色も最高で、何時間でもここから池を眺めていられそう…。
また、御座ノ間には出書院があります。
桑材でできた欄間には麻の葉の模様の透彫が施してあるので、こちらもじっくり見てみてください。
そして、御次ノ間には風情のある縁側もあります。
土縁には、囲碁の石にも使われる那智黒の小石が敷いてあり、白大理石で作られた手水鉢もあります。
鎖ノ間
御座ノ間の後ろ側にある鎖ノ間。
廊下に続く杉戸に鶏が描かれている(鶏鳴ノ板戸)のが特徴的です。
御月見ノ間
その名の通り、月を眺めることができる部屋です。
東側の月見台から月の出を、西側の出書院から池に映る月を楽しむことができます。
東側の御月見台
昔の人も、ここで月を楽しんだのでしょうか。
養浩館庭園では夜にライトアップを行っていることもあるので、その期間に訪れれば養浩館庭園で月を見ることができるかもしれませんよ!
御月見ノ間の出書院から見た「秋のライトアップ」
また、ここでひときわ目を引くのが黒っぽい脇棚。
螺鈿(らでん)作りの装飾的なもので、とても細かい細工が施してあります。
さらに、御月見ノ間ではお茶席が開催されることもあり、練り菓子、餅菓子などとともに本格的なお茶を楽しむ貴重な体験ができます。
県内の主な茶道流派によるおもてなしを受けることができますが、お茶の作法がわからなくても大丈夫!
名勝 養浩館庭園の歴史に想いを馳せ、美しい景色を見ながら、贅沢なひと時を過ごしてみませんか?
お茶席の詳細はこちら→お茶席|名勝 養浩館庭園
御湯殿
御湯殿は、その名の通りお風呂として使われていた部屋です。
昔のお風呂は現在のようなお湯を張るものではなく、蒸し風呂だったそうです。
部屋に入ると床が中央に向かって斜めになっているのがわかります。
これは、蒸し風呂で使用した水を流すための作りなんだとか。
昔の生活様式に興味が湧いてくる場所です。
フォトジェニックすぎ! #養浩館庭園@Instagram
養浩館庭園の美しさがよくわかっていただけたかと思いますが、まだまだ魅力が伝えきれていない!ということで、インスタに投稿されている「#養浩館庭園」をご紹介します。
座敷から眺める池も風情があって美しいですね。
ここから養浩館庭園の四季折々の姿を楽しみたいものです。
こちらの画像は日本在住のブラジル人の方が撮ったもの。
まさに、世界から評価されている養浩館庭園!
櫛形ノ間から見た池も美しいですね。
櫛形ノ間での1枚。
庭園内はゆったり散歩ができるので、お子様連れもおすすめです!
プロのカメラマンによる写真。
櫛形ノ間の雰囲気が最大限に活かされていて、本当に素敵な写真ですよね!
臼ノ御茶屋の蹲踞越しの養浩館庭園。
養浩館庭園で写真を撮るなら外せないアングルのひとつです。
養浩館庭園の池には鯉もたくさん!
エサやりができるので、お子様連れでも満足できるはず。
6月上旬〜10月下旬のみになりますが、エサが1パック50円で販売されているのでエサやりもしてみては?
Instagramに投稿されたたくさんの写真を紹介しましたが、どれも美しい写真ばかりでしたね。
過去には福井市文化振興化による「フォトコン@養浩館庭園」も行われたので、チェックしてみてください。
養浩館庭園の基本情報・アクセス・マップ
名称 | 養浩館庭園 |
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住所 | 福井県福井市宝永3-11 |
電話番号 | 養浩館庭園に関すること、養浩館庭園の行事や団体茶席予約などについて 福井市文化振興課 0776-20-5367 (平日8:30〜17:15 ※12月28日〜翌年1月4日は休み) 団体予約(バス駐車場やガイド等)などについて 福井市立郷土歴史博物館 0776-21-0489 (9:00〜19:00 ※11月6日〜2月末は17:00まで)※12月28日〜翌年1月4日、展示替え時期は休み |
営業時間 | 3月1日〜11月5日 9:00〜19:00 11月6日〜翌年2月末日 9:00〜17:00 (入園は閉園時間の30分前まで) |
休園日 | 年末年始(12月28日~1月4日) |
アクセス | JR福井駅から徒歩約15分 えちぜん鉄道 新福井駅から徒歩約10分 福井鉄道 仁愛女子高校駅から徒歩約15分 JR福井駅から京福バスで「養浩館口江戸上町」下車 徒歩約3分 JR福井駅からすまいるバスで「江戸上町」下車 徒歩約3分 北陸自動車道 福井北ICから車で約12分 |
駐車場 | あり |
SNS | instagram #養浩館庭園 Twitter @fukui_yokokan Facebook https://www.facebook.com/pages/養浩館庭園/152114688186917 |
WEBサイト | http://fukuisan.jp/ja/yokokan/index.html |
福井市立郷土歴史博物館、お泉水公園など、周辺も整備されており、特に郷土歴史博物館に行く場合は、養浩館庭園との共通券で入園料が割引になるので、併せて訪れるのがおすすめです。
郷土歴史博物館の館外展示物「福井城舎人門遺構」も見逃せない!