福井のロケ地全部解説!『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。〜』DVD発売中!
2018年秋に公開された、映画『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。』。
福井県北部を走るローカル鉄道「えちぜん鉄道」を舞台に、新人アテンダント・いづみをとりまく人間模様を描いた作品です。
今回は、オール福井ロケとなったえちてつ物語のロケ地を徹底解説します!
映画『えちてつ物語』とは
主演は人気お笑い芸人の横澤夏子さん扮するいづみ。
いづみのお兄さんに緒形直人さん、キーパーソンとして笹野高史さん、松原智恵子さんなど豪華な俳優さんが出演しており、東京国際映画祭にも出品された注目作品です。
映画の内容の素晴らしさは言うまでもありません!
私はとにかく泣いて、笑って、ドキッとして、また泣いて…。
約2時間、心を動かされっぱなしでした。
劇中ではメインとなるえちぜん鉄道はもちろん、沿線の観光スポットや、いづみの故郷である福井県勝山市の景色がいたるところで登場します。
駅名や施設名などはほぼ実際と同じなので、地元の方は絶対に楽しめるはず!
また、景色がとにかく美しいので、福井に馴染みのない方は、行ってみたい!と感じると思います。
【福井駅】恐竜の大きさにいづみもびっくり!
東京でお笑い芸人として活動するものの、なかなかうまくいかず悩んでいるいづみ。
友人の結婚式で帰郷してきたいづみが最初に登場するのが福井駅前です。
福井県勝山市は恐竜化石が頻繁に発掘されることで有名。
そのため福井県は「恐竜王国」とも呼ばれており、福井駅前では『フクイサウルス』や『フクイティタン』といった恐竜の実物大モニュメントを見ることができます。
福井駅前の詳細はこちら>>恐竜王国福井を気軽に体感できる場所とは?
【えちぜん鉄道福井駅】えちぜん鉄道で勝山駅へ
JR福井駅からいづみの故郷・勝山市へは、ローカル線『えちぜん鉄道』で向かいます。
勝山永平寺線と三国芦原線の2路線があり、福井県北部(嶺北)のだいたいの主要観光スポットにはこの電車で行くことができます。
勝山駅は、勝山永平寺線の終着駅。道中では九頭龍川沿いの美しい景色を楽しめます。
えちぜん鉄道の詳細はこちら>>えちぜん鉄道が丸わかり!終着駅や可愛すぎる新型車両も詳しく紹介します!
【えちぜん鉄道勝山駅】有形文化財のレトロな駅舎
車窓から美しい景色を眺めていると、あっという間に勝山駅に到着。
勝山駅は、大正3(1914)年に最初の駅舎が作られ、平成16(2004)年には国の有形文化財に登録されている駅です。
平成25(2013)年に改修はされていますが、かつての面影がしっかりと残っており、大正ロマンが感じられるスポットです。
さらに劇中では、休日のお出かけの待ち合わせ場所として勝山駅のテキ6が使われました。
こちらは現在でも動かすことができる日本最古級の電気機関車なんです。
左側(前)のテキ6(テキ6形6号)は大正9(1920)年製造、右側(後ろ)のト68(ト61形68号)は大正8(1919)年製造のもので、ともに製造から約100年も経っています。
勝山駅とテキ6の詳細はこちら>>鉄道ファン必見!日本最古級の動かせる電気機関車がある文化財の駅
【勝山ニューホテル】結婚式の会場は観光の際にもおすすめのきれいなホテル
いづみの友人の結婚式が行われたのは、勝山駅からもそう遠くない場所にある勝山ニューホテルです。
いづみもタクシーの運転手さんに「勝山ニューホテル」と言っていましたが、実際もタクシーで行くのがおすすめです。(歩くと30分程度かかります)
山側のお部屋からは勝山城(博物館)や奈良の大仏よりも大きい越前大仏がある清大寺を望むことができる素晴らしいロケーション!
大浴場もあり、満足度の高いホテルです。観光の際にはこちらを利用してみては?
勝山ニューホテルの詳細はこちら>>勝山市観光の拠点におすすめ!勝山ニューホテルに実際に宿泊してみて…
【大清水公園】随所に出てくる勝山市内の風情ある景色
劇中では、いづみの故郷である勝山市内の景色が随所で出てきました。
その風情と言ったら、言葉で表すのは本当に難しいんです。
昔ながらで、あたたかみがあって…。
中でも始めのほうに出てきた大清水は、ぜひ立ち寄って欲しい場所です。
福井県は水がきれい!
そのため、まちなかで湧き水スポットを見かけることしばしば。
中には、今でも地元住民が生活用水や飲料水に使っているという場所も。
昭和30年代までは、大清水も洗い物などの生活用水に使われていたそうです。
生水での飲用はしないほうがいいとのことですが、そばにはベンチもあるので、ひと休みスポットとしてもおすすめです。
また、大清水の周辺は『大清水公園』として整備されており、夏には『大清水まつり』や『勝山灯りまつり』が開催されます。
大清水の詳細&勝山市の観光スポットはこちら>>Dearふくい推薦!恐竜のまち・勝山市観光のおすすめスポット・グルメ25選
【八助】いづみの実家は実際に営業している人気そば店
緒形直人さん演じるお兄ちゃんとの家族模様が描かれる舞台となる、いづみの実家。
劇中では「久兵衛」と書かれたのれんがかかるお蕎麦屋さんですが、実際は『八助』というお蕎麦屋さんです。
福井県のおそばは『越前そば』と呼ばれ、だしや大根おろしをかけた越前おろしそばが代表的。
特に勝山では、独自の基準を設けた『勝ち山おろしそば』が提供されており、そば目当てに勝山に足を運ぶ人もいるほど。
勝ち山おろしそば
八助は行列ができることもある人気店。
元々は製粉所で、現在でも石臼で製粉をしたそばを使っています。
劇中でも緒形さんがそばを挽く姿が出てきました。
八助の詳細はこちら>>行列ができる蕎麦屋・八助で勝ち山おろしそばを食べよう!
【えち鉄カフェ】劇中では数少ない、和子さん(松原智恵子さん)の人柄が描かれるシーンはここ!
泣いて、笑って、真剣になって、また泣いて…。
とにかく感情がいろいろな方向に揺さぶられるこの映画の中で、いづみはもちろん、観客にとってもホッとできる存在である和子さん(松原智恵子さん)。
そんな和子さんといづみが初めてじっくり話をするのが、こちらのえち鉄カフェです。
勝山駅舎内にあり、レトロさの中にもおしゃれさがあって、電車の待ち時間にホッと一息つける場所です。
浅煎り豆2種と深煎り豆1種をブレンドし、注文が入ったらその都度豆を挽いてサイフォンで抽出してくれるというこだわりコーヒーが絶品!
スイーツの種類も豊富なおすすめのお店です。
詳細はこちら>>注文を受けてから豆を挽くこだわりコーヒーが飲める!おしゃレトロなえち鉄カフェ
【福井県を代表する観光地】をいづみが1日かけて楽しむシーン
後ほど詳しく紹介しますが、えちてつアテンダントの仕事は、切符販売、観光案内、お客様のサポートと多岐に渡ります。
車内ではバスガイドさんのような観光ガイドをするのですが、いづみはセリフを覚えるのに苦戦。そこで、自分の足でその場所に行くことに。
登場したのは平泉寺白山神社、越前大仏(清大寺)、一乗谷朝倉氏遺跡、あわら温泉、芦湯、東尋坊など、福井県を代表する観光スポットばかり。
どんな場所なのか、詳しく紹介します!
平泉寺白山神社(勝山市)
とにかく苔が美しい、勝山市の神社です。
2017年に開山1300年を迎えた神社で、かつては中世最大の宗教都市でした。
国の史跡でもあり、その風景の美しさや貴重な建築物の数々は一生に一度は見ておくべきです!
詳細はこちら>>【開山1300年のパワースポット】福井の苔宮・平泉寺白山神社のみどころ25選!
越前大仏・清大寺(勝山市)
「建物内にある」「鎮座している」大仏のなかで日本一大きい『越前大仏』。
あの奈良の大仏よりも大きいんです。
越前大仏のある大師山清大寺の敷地面積は22ha。
なんと東京ドーム4個分以上の広大な敷地内に、大仏、大仏殿、五重塔、日本庭園などが配置されています。
しかもこの場所、個人が私財を投じて昭和62(1987)年に完成したものなんです。
そのスケールはとにかく圧巻の一言です。
詳細はこちら>>日本一大きい大仏は福井に!五重塔も日本一⁉なんでもでかい珍スポット『越前大仏清大寺』
一乗谷朝倉氏遺跡(福井市)
日本のポンペイとも呼ばれている中世最大の遺跡です。
戦国時代初期には全国でも有数の戦国大名であった、越前朝倉氏の本拠地だった場所です。
しかし、1573年に信長によって火を放たれ焼失。
その後400年以上もの間、田畑の下に埋まったままだったというかなり珍しい場所です。
現在では長年の発掘結果や史料等を参考に、当時の町並みが200mに渡って再現されている(日本初の原寸大の立体模型)他、庭園や藩館跡などを見ることができます。
一乗谷朝倉氏遺跡は全体が国の特別史跡、敷地内にある4つの庭園は国の特別名勝、出土品は重要文化財に指定されています。
この3つの指定を受けているのは金閣寺や銀閣寺といった有名なスポットばかり!実際に足を運んで、そのすごさを実感してみてください。
詳細はこちら>>大河ドラマにも登場!一乗谷朝倉氏遺跡は日本のポンペイ!?隠れた魅力と見どころ16選
丸岡城
町のシンボルであり、国の重要文化財に指定されているお城です。
戦国時代の天正4(1576)年、一向一揆の備えとして織田信長の命により柴田勝家が甥の勝豊に築かせたお城であり、江戸時代の寛永年間(1624~44年)に丸岡藩初代藩主の本多成重が整備したと考えられています。
あわら温泉
福井県を代表する温泉地『あわら温泉』。
1883(明治16)年に開湯して以来、永平寺の精進落としの湯や「関西の奥座敷」として発展し、多くの文人墨客、著名人、天皇陛下にまで愛されるようになった温泉地です。
日帰り入浴ができる旅館・施設も多いので、町歩きしながらいろいろな温泉を巡るのもおすすめです。
詳細はこちら>>『あわら温泉』の楽しみ方!のんびりまち歩きして歴史ある温泉街を楽しもう!
芦湯
温度の違う5つの浴槽で、無料で足湯が楽しめるスポットです。
湯めぐりする時間がない方は、足だけでも温泉気分を味わいませんか?
詳細はこちら>>無料の足湯で気軽にあわら温泉が楽しめる!総ひのき造りの『芦湯』
東尋坊
福井県で最も有名なスポットではないでしょうか。
東尋坊の名前の由来が、同じ名前のお坊さん、ということを知っている方は多いと思いますが、東尋坊は最初に紹介した『平泉寺』のお坊さんだったんです。
ちょっと怖いイメージもあるかもしれませんが、晴れている日はむしろ絶景スポット!
青い空と青い海に白っぽい断崖絶壁のコントラストがとってもきれい。
波が穏やかな日は、こんなの東尋坊じゃない!と思ってしまうくらいです。
陸からはもちろん、遊覧船に乗って海側から東尋坊を眺めることもできます!>>海から東尋坊を見ると…?不思議な岩や雄島も観察できます
【一本義・鯖のなれずし】福井グルメにも注目!
観光スポットだけでなく、劇中に出てくる福井グルメにも注目!
回想シーンのいづみのお父さんや、緒形さん演じるお兄ちゃんが飲んでいたお酒は全て『一本義』。
『一本義 上撰本醸造』と『一本義 金印』らしきものが飲まれていました。
一本義は勝山市唯一の酒造メーカーで、福井の食材そのものの味わいが引き立つよう、キレ味の良さを大切に作られています。
その味わいを評価され、昭和の始め頃から福井県内では製造・販売高ともにトップブランドとなり、現在も県内外の多くのファンから愛されています。
一本義の詳細はこちら>>福井県を代表する日本酒『一本義』はどんなお酒?
また、夕食には『鯖のなれずし』も登場していました。
福井はかつて京の都の台所のような場所(皇室・朝廷に海産物などの御食料を献上した「御食国」であった)で、特に、現在では『鯖街道』と呼ばれる道を通って鯖などが多く運ばれていました。
そのため、福井県内では鯖のなれずしが郷土料理として伝えられている地域も多くあります。
鯖のなれずしは寿司のルーツとされているもので、鯖を米と麹で発酵させるのが基本です。
勝山市北谷地区では、冬の貴重なタンパク源として古くから鯖のなれずしが食べられていたそうです。
【勝山左義長まつり】要所要所で出てくる「さぎっちょ」は実際にある勝山の奇祭
劇中で何度も出てくる「さぎっちょ」という言葉。
これは、勝山で毎年2月に行われる『勝山左義長まつり』のこと。
登場するポスターもお祭りのシーンも(一部)本物です。
勝山左義長まつりは福井県の無形民俗文化財に指定されている伝統行事で、300年以上前から行われていたと言われている伝統あるお祭りです。
左義長自体は珍しいものではありませんが、勝山では『勝山左義長ばやし』がお祭りのメイン。
櫓の上では「おどけ仕草」で浮かれ、「浮き太鼓」で”楽しさ、面白さ、滑稽さを表現”します。
劇中ではいづみと家族をつなぐ重要なキーワードにもなっている左義長まつり。
物語は秋頃から始まり、2月の左義長に向かって進んでいきます。
その間にいづみがアテンダントとしてどのように成長するのか、いづみを取り巻く人間模様がどうなっていくのか…などが見どころとなっています。
勝山左義長まつりの詳細はこちら>>春を呼ぶ奇祭『勝山左義長まつり』はみんなが笑顔になれるキュートな伝統行事
映画のテーマ「えちぜん鉄道のアテンダントさん」って?
そもそも映画のテーマとなっているえちてつの「アテンダントさん」とはどのような人なのでしょうか。
こちらがえちてつの本物のアテンダントさん
アテンダントとは、電車の中で切符販売や乗客のサポート、観光案内などをする女性乗務員さんのことです。
それだけなら、車掌さんと同じではないの?と思うかもしれませんが、えちてつのアテンダントさんは、車内でバスガイドさんのように観光案内もしてくれるんです。
劇中では、そんなアテンダントさんと乗客とのあたたかいやりとりなども描かれていました。
また、『えちてつ物語』はもともと、えちぜん鉄道のアテンダント・嶋田郁美さんのノンフィクション本『ローカル線ガールズ』をヒントに作られた映画です。
そのため、実際にあった事故も物語の中では重要なポイントとなっていました。
映画の中で、えちぜん鉄道の社長を演じる笹野高史さんがえちてつへの思いを語るシーンがあります。
映画自体は実話を基にしたフィクションですが、えちぜん鉄道に携わる方の感情をリアルに感じました。
えちぜん鉄道を知っている人も知らない人も、感じることがたくさんある作品だと思います。
故郷から離れた全ての人の胸にくるものがある作品
えちてつ物語のテーマの一つは「故郷」。
東京でうまくいかず、不本意ながらも故郷に帰ってきたいづみは、
故郷で暮らすお兄ちゃん、
故郷を出たくても出ることができなかった同僚など、
さまざまな人とふれあいます。
故郷が懐かしいな
まだ故郷には帰れないな、
そろそろ故郷に戻らないと…。
いろいろな人がいると思いますが、きっと誰もが故郷に想いを馳せることができる作品だと思います。
また、プロデューサーの河合広栄さん自身が福井県勝山市の出身。
そのため、作品で描かれている福井の姿はかなりリアル。
故郷を思う河合さんの気持ちも、私たち観客の心を動かす理由なのかなと思いました。
「えちてつ物語〜わたし、故郷に帰ってきました。〜」は、とにかく涙無しでは見られない、心温まる映画です。
福井県の方はもちろん、県外の方もぜひ見てみてください!